春日
山を背にして集落の一本道に立ち、前をみると大きな丘やまばらな雲の向こうに大きな山が見える。
雨が降った次の日の朝、晴れた空にあの山が見えて、雲海がこちら側まで広がっている。
畑仕事が終わった空は、秋雲が赤く染まっている。
初めて見た時のそんな日常の風景を今も心に思い浮かべることができる。
この集落の一本道は山へ続いていて、一度だけ歩いて上まで行ったことがある。
中型バイクで登っていくが、途中でバイクを降りて歩きになる。なぜなら過去の台風でこの道は封鎖されていたのだった。
倒れた木や、アスファルトを割って生える草木、地面を覆う苔、路肩から崩れた土砂に、そこからまた草木が成長している。
人間の時が止まって、自然が元に戻しているような空間。
猿の糞や熊の足跡。陥没してできた大きな穴をよけ、今では風が通るだけのトンネルを抜けどんどん登っていく。静けさの中で鼓動が高まるのは斜面を登っているからということだけではない。
最後は今でも通っている道路に出る。そこにあったのは、最高の眺望とかつて流行った天空の別荘地。立派な建物が使われることなく何軒かは廃墟のようになっている。
人が作ったものはいずれ朽ちる。だから手入れをしたり直したりしないければ長くは続かない。人は年をとるから代を継いでいかなければいつか終わってしまう。
朽ちていい、終わってよければそれはそれでいいが、残したいものなら時代が変わっても残るものを作り、維持することができる様にしなければならない。
畑はこれからも必要だと信じている。それは単に野菜、穀物、果物などを生産するだけではなく、土とのふれあいや季節の移ろい、情景を心に与えてくれる無形の遺産でもある。だからたとえ工場で野菜が作られる時代がきても畑には畑にしかない価値がある。
今日本にはやる人がいないため自然に還りつつある畑がごまんとある。畑の開墾は、今のように重機が使えなかった時代は相当の労力を費やす。私もフィリピンで経験したが、木株を一つ取り除くだけで数十回、数百回もつるはしを降りおろし、途中でお昼休みになるくらい時間がかかる。
今ウィルスの影響で食料の輸入が一部ストップしているが、何かと日本の食料自給率の問題は取り上げられる。取り上げられる一方で畑が野に還っていくスピードは加速傾向、つまるところは食料消費者の意識の問題。地産地消の考えで、地元のものもしくは国産の旬のものを選んで買うようにすれば余計なエネルギーは使わないで済み、国産のものに需要が生まれる。
また、山が多い地形なため、機械を入れて大規模にはできない地域も多い。家族経営から自家用プラスαくらいの規模も多い。多種多様なあり方で無理なくそれぞれの農を営む形が、変動激しいこのご時世には一番強いと思う。(隣同士で相反する農法をすることはできないが)
mote-春日の活動の中で、地域の耕作放棄地の改善(使われていない畑をメンバーもしくは移住者や希望者へ案内して活用する)も行っていきたい。これは鹿や猪、猿や熊などが人里に降りて来やすい環境を改善することにもつながる。農作物への獣による食害が問題になっていて、国が駆除に力を入れているが、その政策で新たな問題も生んでいる。その一つは単なる殺処分で終わってしまっているということ。その肉をうまいこと人の食料にすることができれば、ある意味獣害は問題でなくなる。
空家についても、無人のままで経過していくと劣化が進み、対処が難しくなる。地域とも連携しながら活用する道を探っていきたい。
古いものを守りたいということだけではなく、今あるもので使えるものを使う方が実現性が高いということ。
それに目的はその先にある。例えば、空家を活用して滞在可能な家にすることができれば、農業をしない人でも夏の農繁期に拠点に滞在することができる。地域にメンバー、協力者が増えれば、少人数ではできないこともできるようになる。例えば、協力して家畜の世話をする。イベントを開催する。留守を頼むなど。
出たり入ったり
活動は農業に限らない。
自然に囲まれた環境だからと言って、直接自然と関わらないことでもいい。何かを生産すること、提供することだけが活動ではない。
起こりうるリスクへの備えも一つの活動だと考えている。関東直下で地震が起こった時、富士山が噴火した時、経済危機や食料危機、身近な病気やアレルギー、今回のような感染症。常にアンテナを立て情報を拾い、正しく読み取り、時に書き出し、備えなければもったいない。せっかく生きるベースとなる自然がそばにあるなら、その循環の恩恵を受け、人に分けられるような拠点でありたい。
健康について、食について、日々の習慣や、歴史や経済、政治に関しても知らなかったでは済まされない、もったいないこともたくさんある。勉強、学びも日々積み重ねていきたいところだし、多くの意識ある人にとっても要求の強いところだと思う。
こうしたものは、メンバー間で共有したり、意見交換したり、外に発信することでより意義深いものにもなる。
自然観察や自然探索、森林セラピーや春日温泉をお借りしての湯治。玄米菜食、マクロビオティック、ベジタリアン、ビーガン、断食リドックスも。工作、木工、DIYから建築、土木工事。味噌作り、山菜、野沢菜など漬けもの作り、きのこ栽培や養蜂、果樹園、米作り。水力地熱バイオマスなどから電気を得るエネルギー生産、炭作り、堆肥作り、ミミズコンポスト、有機肥料作り。ニワトリ、ヤギ、羊、豚に魚、エビも食用やその他様々な活躍をしてくれる。
持続可能の観点からみると、あまり多くをやろうとするのは賢明ではないですが少しずつ形になればいいなと思っています。ほとんどのところは人次第。資金面では、初期投資が高額なものや最初はリターンが見込めないもの、そもそも発生しないものもあります。ベースに農業があるとはいえ天候に左右される不安定なものですから活動の中でもインカムを得られなければ持続は不可能。100%で活動することができなければ本末転倒。
いくつか準備が整ったものから体験イベント、ワークショップとしての運営を考えています。
例えば、やさいの森(石川さんの農園)では都市部から口づてで人が集まり、農業体験を開催しています。一泊二日で夏野菜の収穫と夜はバーベキュー。近くの温泉付き旅館で宿泊していただき、二日目はお土産やさいの収穫や物販も。いつも子供達が多くて一気に賑やかになります。
職業ではない
マイアスでは短期滞在から長期滞在でも活動に興味がある、現地を見てみたい、メンバーになりたいという人を受け入れています。ただし、マインドオブジアースは職業ではありません。何をするか、何をしたいかは個人で決めてください。マインドオブジアースはそんな人たちの目には見えないつながりと場を提供していきます。
このホームページの役割は、場所、人、情報をつなぐプラットホームとしてあること。
状況が変わり
今回のウィルスの件もあり、思ってた以上に世の中が早く動いているので、今年、1年目は最初考えていたプランとはちがうプランでいくことになりそうです。
社会の変化、ニーズを注視して優先順位の早いものから手をつけていく必要があるでしょう。自分たちが思っている以上に時間がないのかもしれません。
夏の農繁期が終わり、秋以降に予定していた若者向けと一般向けのプログラムもコロナウィルスの状況によっては難しいかもしれません。農村への移住希望者が増えたり、食料需要が増えたり。国の財政はどん底でしょうし、より個人がしっかりしないと生きていけない状況になるでしょう。日本はあらゆる面から見ても先進国とは言えないレベルまで落ちました。その一つがメディアと言われています。情報を鵜呑みにするのではなく個人で判断しなければなりません。
自宅待機中ではありますが、私の体調は普通です。できることはたくさんあるので、もらった時間と思って4月10日まで東村山で過ごします。次の投稿は長野からになることを期待しています。